森博嗣「朽ちる散る落ちる」

朽ちる散る落ちる (講談社文庫)

朽ちる散る落ちる (講談社文庫)

Vシリーズ第9弾。
壮大。
これぞ森ミステリ!という魅力が凝縮されていた。
短編集「地球儀のスライス」(99年1月)で披露された練無のエピソードで張られた伏線(伏線の定義がイマイチ正確に理解できないので、伏線といえるかは分からないが・・・)が本作「朽ちる散る落ちる」(02年5月)で回収されるという(時間的な)壮大さ。
加えて、第7弾「6人の超音波科学者」の後の時間軸のため、その事件とは切っても切れない関係というか・・・。
どちらから読んでもOKな上下巻、といった感じか。
そういった繋ぎの巧さに加えて、久々?な理系炸裂のトリック!
S&Mシリーズ第5弾「封印再度」のような感じ、というと既読の人は分かりやすいかも?
トリック解説の時の紅子の言ってることは、理系の知識が無い人には意味不明なんだろーなぁ。
今回のトリックは、非常に新鮮な感じがした。
非常に面白いトリックだったな・・・。
「見かけ上のマイナスの質量」、なるほどねぇ・・・面白い表現だw


実現可能か否か、という部分は置いておいて、
封印再度」や今作のようなトリックは面白い。
文学的には、評価されないんだろーけどさ。
理系の知識、ってほど大がかりではないけど、ほんと、ちょっとした理科の授業ででてくるような法則の類を拡張して、小説に仕上げる。
そのトリック(と呼べるかはは分からないけど)を読むのは、数学の問題を解く道筋をイメージできた時や、物理の法則を使って物体の運動を予測し、予測通りに動いたときの「面白さ」に通じるものがあるよなぁ、と個人的に思う。



また、いつもの森ぽえむ?とでも表現すればいいのか、独特の語り口調は本作にも健在で、毎度毎度ながらなるほどーと思ってしまう。
特にお気に入りなのが、

生きていくために、その方が楽だから、
人は仮面を作る。
私も、
仮面を幾つも持っている。
仮面を被り、
仮面を付け替えるうちに、
どれが本当の自分なのか、
わからなくなってしまった。

という表現。
少なからず誰しもが感じてる事なんじゃないかなー。


さてさて、次回でVシリーズも最終話。
どんな事件、そして結末が待っているのか・・・。